職場でホッチキスを使おうとするが、一度ガシャリとやっても針が出てこない。あれ?と思って針の出る場所に左手を当てがったそのとき、大きな音とともに親指に激しい痛みが襲ってくる。たちまちにぷくっと膨れた赤い血がこんこんと湧き出してきて、オフィスだというのに思わず指を舐めてしまう。
おそらくは、ホッチキスを掴んでいた右手が無意識のうちに力を込めてしまったのだろう。あまりの愚かさに苦笑しつつ、しかしこれまでホッチキスを握りしめてきたこの右手は、たしかに何かを綴じるためだけの運動を強いられてきたのだろうとも思う。まさか間に挟まれているものが、自分の相棒である左手だとは考えもしなかったはずだ。
痛みも引いてきて、血も治ってきた親指にバンドエイドを貼る。
ホッチキスは商品名で、正しくはステープラー。バンドエイドも商品名で、正しくは絆創膏。ふとそんなことを思った。
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