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2026年3月24日

通勤で乗っていた電車が途中駅の手前で停まる。間隔調整を行うとのこと。
まあ、この路線では良くあることだ。月に何度かは数分か数十分の遅れが発生する。念のためにSlackで「電車が遅れているので出社が少し遅くなるかもしれません」と送っておく。この遅れの連鎖こそ、まさしく社会的な構造がわかりやすく可視化されたものだなと思う。
と、吊り革につかまっている僕の前で、男性がのそっと立ち上がる。ほとんど僕に席を譲ってくれたかのような完璧な位置での離席で、僕は横の乗客と一切の心理的な駆け引きをすることなく、そそくさと空いた席に座る。
考え事をしようと目を閉じる。そのときふと気がついてしまった。僕の目の前で席を立ったあの男性は、電車が停まったその瞬間に「駅に到着した」と思ったのだろう。が、実際のところ扉は開かず、電車は駅と駅とのあいだで立ち往生をしているだけだ。この電車が再び走り出し、次の駅で停車するまでの時間は今のところ明らかにされていない。
つまるところ、僕は男性の席を奪取してしまったのではないか。ほんのわずかな快楽を得るために、僕は男性の勘違いにつけこんでいるのではないか。
僕はじっと目を閉じ続けている。考え事をするためだった当初の理由とは異なり、今となっては男性と目を合わせないために目を閉じ続けている。開かない扉の前でじっと立っている姿などを目にしてしまったら、朝っぱらからひどい罪悪感を抱いてしまうことだろう。
十分以上、電車はその場所で動かなかった。
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