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2026年2月26日

OJT
On-the-Job Training。職場での実務を通じて、上司や先輩が新入社員や配属間もない社員に対して直接指導を行い、必要な知識・スキルを習得させる実践的な人材育成手法。
似たようなスーツを着た男性が二人で立ち話をしている。一方は二十代半ばくらいの若者。毛先は軽く遊んでおり、フットサルが趣味です、みたいな若々しさがある。もう一方は四十歳くらいの男性で、短く刈りそろえられた髪の毛には白髪が混じっている。二人とも、スーツの袖には同じ会社のバッジが貼られている。
時刻は夜10時くらい。内容こそ聞き取れなかったが、どうやら他愛もない雑談をしていたらしい。
と、若者は首をちょんと曲げて、軽いお辞儀をするような姿勢で「今からOJTいいっすか」と言う。
なんつーコミュ力なんだ。オフからオンへの軽やかな跳躍。パブリックな中にプライベートを紛れ込ませる愛嬌。類稀なる「後輩力」を目の当たりにして、まるで手品を見ているような驚きを覚える。彼のような人がいるから、人は人と親しくなることができる。
ほとんど感動と言って良い気持ちでその様子をまじまじと見つめている自分に気がつく。赤の他人としては、あまりに二人の様子を凝視しすぎている。ここまできたら話しかけてみようかとも思うが、元来の奥手な性格が顔を出し、すんでのところで口をつぐんでしまう。
「じゃあ羽田経由の場合なんですけど……」と、年上の方の男性が言う。
「あー、その場合はね」と若者が言う。「その場合はですね」と言い直す。
お前、先輩だったのか。
驚きのあまり、彼らをこれまで以上に凝視してしまった。不審な顔を向けられたかもしれないが、一切気が付いていない。
「そうなんです。妻の実家が埼玉らへんで。だから近くに住もうと」
「でも結構遠いでしょ。遠いですよね」
またオフの話に戻っている気がする。
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