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2026年4月1日

朝、地下鉄の改札を出ると、コツンと高い音が響く。硬い音が不規則なリズムを立て、それらが近づいてきたり遠ざかってきたりする。
その音の一つをつかまえて注意を向けると、白い数珠の玉のようなものが跳ねている。凹凸のある地面をバウンドしているからか、ひとつ跳ねるたびに予期せぬ動きをしていて、なかなか目で追うのが難しい。広角に周囲を見渡すと、いくつもの玉が同じように不規則に散らばっている。
ちょうどそれらの玉の中心付近に、その玉を拾おうとしている男性がいる。通りかかる人の幾人かが玉拾いに協力をしている。
僕も目の前の玉を拾おうとする。が、その不規則な動きに惑わされて、なかなかタイミングよく手を差し出すことができない。卓球ボールのように高く跳ねるのでバウンドを合わせるのが難しく、ましてやその高さや方向性の予測がつかないとなると、これはなかなかに至難の技だ。
何度か挑戦したが、結局手を触れることもできず、玉は僕から遠ざかり、他の通行人の足元へと転がっていった。深追いをするべきかとも思ったが、最終的に僕はその場を立ち去ることにする。
あの玉はもう僕の守備範囲ではない。
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