国立近代美術館で開催されている「アンチ・アクション展」に行く。

東西線の竹橋駅を出ると、すぐそこには皇居の木々が目に入る。その向かいには歴史ある大企業がオフィスを構えるビルがあり、並びに毎日新聞社の社屋が建っている。めちゃくちゃ昭和の東京って感じ。
美術館に向かう——が、まずはその前に腹ごしらえをしたい。ビルの地下にレストラン街があるので、特に当たりをつけずに階段を降りていく。これまたなんとも歴史を感じる飲食店が並んでいる。カレー屋や豚カツ屋。ただ、五十年以上この場所で営業してきたんですよ——と、店主のおばあちゃんがインタビューに答えているドキュメンタリーを想像する。
が、時間はもう二時を過ぎていて、ほとんど店じまいをしていた。中華料理屋が空いているので入る。
店は結構満席だ。奥の方の円卓に案内されると、すでに三人の先客が座っている。あまり考えずに一番上の担々麺を頼む。料理が運ばれてくるまでの待ち時間が少し気まずい。円卓というだけで、何か話題を探さなければという気持ちになる。
担々麺を啜る。結構本格的に辛くて美味しい。1,200円を払って美術館に向かう。
「アンチ・アクション展」は、1950年代から60年代にかけて展開した女性の美術家による抽象表現をキュレーションした展覧会である。批評の文脈=美術史から忘却された女性たちの作品の復権を意図して構成されている。
という文脈を事前知識として押さえてはいたが、僕個人としては、美術館で前衛表現を見る楽しさは、「自分が何を良いと思うのか」を具体的な作品を通して考えられる点にあると思っている。今回の展覧会で、たとえば僕は山崎つる子の作品に心を惹かれた。

その感覚を拙いながらも言葉にしてみると、「幾何学的な(つまりは定規とコンパスによって描きうる)形態と、そのレイヤーを逸脱する非幾何学的な形態が交錯する絵が好きだ」ということになる。それをもう一段抽象化すると、「枠」とそれをはみ出す形が混じり合っているものへの関心とでも言えるだろうか。あとは、単純に原色的でツルツルとした色味。曖昧な色彩よりも、派手派手しく刺激的な色が好きだ。
抽象的な「良し悪しの基準」が、具体的な「抽象作品」を通して明確化されること。字義だけとってみればだいぶ不可解にも思えてくるが、即座に「意味」へと還元されない作品を見る喜びを、僕はそんな風に最近味わえるようになってきた気がする。大人。


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