今週末に職場の同僚が引越しをするというので、少し雑談をする。箱詰めを行なっている最中らしく、その過程で、これまでの生活で隠されていた部屋の姿が色々と明らかになっているらしい。長いあいだ床に置きっぱなしになっていた本にはずっしりと埃が溜まり、少し黄ばんでしまったのだという。
まあ、そういうもんだよな、と思う。僕の部屋なんかどう考えてもそれよりずっと悲惨な状況で、押し入れの奥に詰め込まれた無数のガラクタがどんな状態になっているかなんて知る由もない。
とはいえ、それらの本はすべて段ボールに詰め込んだのだのこと。だんだんと生活感を失っていく部屋の様子を思い浮かべてみる。「それでも生活は続く」とどちらかが言った。
ふと、だんだんと空っぽになっていく部屋の中で、それでも最後に残るものは一体なんなのだろうと思った。引越しの荷物で、最後の最後まで箱詰めを延期してしまうものこそが、その人の最も大切にしているものなのではないか。思ったことをそのまま同僚に尋ねてみると、「食べ物?」と返答があった。「食べること」を大切にしているなんて素晴らしい。ただ、そもそもの僕の仮説が全く見当違いな気もする。
僕は引っ越しの時、一体何を最後まで箱詰めせずに放っておいたのだろう?
コメント