金曜日。会社の忘年会で「そっくり館キサラ」に行く。
入店の列に並んでいると、「叶姉妹のご来店です!」と大きな声が響く。一瞬なんのことかわからずに驚くが、「入店時に客を芸能人で喩える」のはこの店の十八番らしい。めちゃくちゃショーじゃないか、とテンションが上がる。
劇場のような座席につき、まずはバイキング形式の食べ飲み放題。期待以上どころか今まで食べたことのあるどんなバイキングよりも美味しいご飯に感動していると、先ほどの店長がマイクを手に持って余興を始める。
これがまあすごい。各グループの構成を見るやいなや、怒涛の早口で「なんとサザンオールスターズさんが来られてます!」みたいに煽る(男性4人女性1人のグループの場合)。そして勢いそのままにバイキングのルールを説明し、お客さんに乾杯の音頭を取らせ、牛すじカレーの美味しさを熱弁していくのだが、とにかくその間、店長は大きな声でずっと喋り続けている。
もちろん「こんなお客さんにはこんなコメント」みたいな台本はあるのだろう。けれども台詞回しがここまで血肉化していると、結構感動ものである。たまに舞台を見に行っても思うが、やっぱり生身の人間がしゃべっている凄みというものはあって、素朴に「プロってすごいな」と思う。
そんなこんなで余興が終わり、後半はモノマネ芸人たちのショー。これも面白かった。なんというか、エンターテインメントの元祖といった趣があって、ここ十年くらいでぐっちゃぐちゃに捻くれた感性をマッサージしてくれる。「斜めから面白いことを言う」よりも、「大きな声で騒ぐ」方がカッコいい気もしてくる。
しかしまあ、僕はいったい何をしているのだろう? お前があれこれカッコつけてセンス良さげなことを言おうとしている間に、彼らは愚直に何人ものお客さんを笑わせているのだ。常に人生に迷うモードにあるだけか。


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