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2024年9月4日

【素潜り旬さんの日記】片腕の日(丹下左膳というか大河内傳次郎と川端康成をめぐって)

ギターの2弦と3弦の音(開放弦)で目が覚めるわけでもなく、何度目かのアイフォンのアラームで無理くり起き、娘たちの着替えを急かしながら数分後にソファでまた眠った。昼前、妻に起こされ、焼うどんを食べる。醤油味。俺はニラのことが好きだが、ニラは俺のことを嫌いだろうなと思うことがよくある。理由は特にない。ニではなくラが俺にそう思わせる。

マキノ雅弘『續 丹下左膳』を観た。丹下左膳の續と言われても色々ありすぎてどの續かわからなかったが別に気にしていない。スターウォーズはエピソード8から観たし『用心棒』を観ずに『椿三十郎』を観てもなんとも思わなかった。とりあえず續と同じ大河内傳次郎主演で監督は山中貞雄の『丹下左膳余話 百万両の壷』は観ているので大丈夫だろうなと思った。そして面白かった。殺陣が丹下左膳対多勢のシーンばかりでそれもほぼ引きのショット、人数の多さが目立つし大立ち回りをする丹下左膳が小さく見えるながらも連続性を持って追えるので、あれだ、子供の頃遊んでいたゲームの「○○無双」シリーズみたいなダイナミズムがうまれる。そこにはちゃんとした気持ちよさ、があって、だって物語は、ずっと追われ続けている丹下左膳、二本の妖刀をめぐる謀略、辻斬り、シリアスなのだ、とにかく。だから腕一本で大立ち回りする丹下左膳はあまりカットを割らずロングショット!ああ、気持ちがよいのです!最後はちゃんと顔に寄って、あの傷が見える。そう、この男こそ丹下左膳なのだと。

映画を観た後は川端康成文学館へ。5年前に萩原朔太郎記念館・蔵でポエトリー・リーディングをしたときに、同じ場所で展示していたきっかけで出会った川崎継子さんが、今日から処方箋文庫なるものを期間限定で開いていた。いつもと違い病院めいた川端康成文学館の一室で継子さんは白衣を着ている。診察前さながら問診票を受け取り、外来窓口、言葉のレントゲンエリア、診察エリアをまわって、よみぐすりを持ち帰る。よみぐすりというカルテカードには川端康成ら文豪の小説や随筆からの一節とその紹介文が書かれていた。俺は川端康成の美学がずっと気になっていて、今日の処方箋文庫でも俺の眸を惹きつけるのはその美学に基づいた言葉なのだった。たとえば「片腕」の、

「片腕を一晩お貸ししてもいいわ。」と娘は言った。そして右腕を肩からはずすと、それを左手に持って私の膝においた。 (川端康成「片腕」処方箋文庫カルテカードより引用)

などがそうである。このシュルレアリスティックな短篇を処方されに出向いたと言えましょう!そして何度も読んだこの短篇と俺は三島由紀夫がそうであったように出会い直した!ありがとう!継子さん!

自転車で俺はそのまま富士正晴記念館へ向かい「富士正晴と劇場文化」展で淀川直治と富士正晴の同窓生対談を読み、富士正晴が大河内傳次郎の評伝を書いていることを知る。今日がつながるぅ!!記念館は図書館に併設されているから俺はその評伝を借りて帰ることができた。この日記を書き終えたいま、すぐ読み始めよう。

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