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2026年3月31日

【運営の日記】QUOカード

吊り革に掴まっている僕の向かいで、三十歳くらいの男性がITの技術書を読んでいる。

僕のKindleにもまったく読んでいない同じ本が入っている。彼はその本を半分くらいは読み終えているようで、仕事終わりの社内で無為な時間を過ごす僕はささやかな(けれども決定的な)敗北感を味わう。

チラと他人の読んでいる本の中身を見ると、しおり代わりにプリペイドカードのようなものが挟まっている。どうやらQUOカードのようだ。なかなか珍しい。

めちゃくちゃ話しかけたい。「同じ本を読んでいるんですよ(まだ読んでいないけれど)」「QUOカードを挟んでいる人って初めて見ました」「まだ残金あるんですか?」などなど。たとえばこれがセミナーか何かの会場で、たまたま隣に座る人が同じような状況であったら、あまり躊躇もせずに話しかけていたかもしれない。

けれども通勤列車は他人としてしか関わり合えない空間だ。電車の中では恋の始まりも起こるはずがない。親しくなれた可能性を夢想して、僕は最寄駅で電車を降りる。

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