急に寒くなったので、クローゼットの奥から電気ストーブを引っ張り出す。一年前に買ったかなりの安物だが、安いストーブ特有の直接的な熱さが冬の朝にはちょうど良い。「部屋全体をじんわり温める」みたいな文句を売りにした高級ストーブは僕にはまだ早いと思う。料亭で出される3万円のコースより、夜中に食べるカップラーメンの方が美味しい、みたいな理屈だ。
いざスイッチを入れてみると、ジーン、と地面を這うような音がする。蛍光灯みたいな熱源がオレンジ色に灯り、凍え切った足先が焼かれるように温まっていく。
しかしなんだか焦げ臭いような気がする。それもそうだ。一年間ご無沙汰していたこの電気ストーブには、全体にうっすらと埃が溜まっているのだ。ちょっとした雪化粧のように見えなくもないが、もちろんその埃は熱で溶けるわけもなく、ただ焦げるばかり。
一度電源を落とし、簡単な掃除をしようと思う。しかしこの駄菓子みたいな熱さは、再び僕が触ることを決して許さない。そんなわけで、こいつがしっかり冷め切った晩に掃除をしようと誓って家を出る。
もちろん言うまでもなく、夜に掃除をするわけがない。
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