夕飯を食べ終え、食休みに夜道を歩いていると、車一台通れない細い道の奥から人影がぬっと現れ、ものすごい勢いで僕に向かって直進してくる。
その速さたるは、まるでパラパラ漫画を見ているごとし。ダンス会場かと思えるような小刻みな足音が、夜の闇の中でコツコツと響く。
ちょっと驚いて、文字通り後退りしてしまう。「襲われるのではないか?」と少し不安になるが、よく見るとその右手は紐のようなものを掴んでいて、その先端に、より小刻みなステップで駆ける犬の姿があった。
犬に走りまわされているのである。
軽やかで健康的なステップで、前へ前へと走る犬。なんとか引き離されまいとその手綱を掴み、荒い息を吐きながら小股でついていく飼い主の男性。
良い光景だった。
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