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2025年9月29日

【運営の日記】セリフを覚える

ENBU同期の撮影で成増へ行く。

演技の訓練など全く受けていないが、声をかけてもらったので、なんと役者としての参加である。意外なお誘いだったが、元々が前に出たがりな性格もあるので、素直に嬉しいし楽しみ。それに、実際に役者さんの立場に立つことで、「演じやすい」空間づくりの勉強にもなるだろうと思う。


まず思ったのは、当たり前のことかもしれないけれど、「役者がセリフを覚えていること」は重要なんだということ。

演劇の場合と違って、映像制作の場合は、事前にリハーサルの時間を十分に取れないことが多い。事実、演技はロケ地に行ってみないと見えてこない部分も多く、前もってあらゆる動きを想定するのは難しい。となると、一回顔合わせをしてだけであとは現場で一気に作り上げるパターンも多いのだが、その場合、演技を短い時間で区切ってやってもらうことにもなる。それに撮影の都合上、なかなか通しで演技を行なってもらうのが難しい場合も多々ある。

そうした理由もあって、役者さんが「前もってセリフを覚えること」の必然性は演劇の場合と違って著しく低い。ただ、今回きちんとセリフを覚えてみて思ったのは、ほとんど無意識のレベルで台詞を言えるようにならないと、細かい演出を実行するだけの余裕が生まれないということだった。脳のメモリが「セリフを言う」ことに多く割かれていると、例えばリモコンを掴むような単純な動きでも、なかなか自然に行うことができない。濱口竜介は「本読み」についてしばしば語っているが、その過程を通して役者の演技が「分厚くなる」と触れていたことは、あるいはこうした側面を言い当てているのかもしれないと思ったりもした。

しかし実際問題として、「前もって台詞を全て覚えてください」と指示を出したとしても、なかなかそれを皆が実行してくれるわけではないだろう。その温度感を担保できるだけの経済的な余裕があれば良いのだが、まあそれは単純に難しい。となると、本番前の演出で必要なことは、「実際に台詞を覚える」ための場を何度か用意することしかない。撮影の1〜2ヶ月くらい前から、数回に分けて実際にセリフの読み合わせを行う場を設ける。まずは単純に素読をしてもらって、最終的にはセリフを誦じてもらう。次の制作では、この時間をきっちりと確保することが一つの狙いになってくるのだと思う。

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