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2024年5月6日

祝われるのは僕じゃない

久々の日記です。


友人の結婚式に行く。高校時代の部活の同期が結婚をしたのだ。

光栄にも受付を依頼されたので、披露宴の控え室で出席を確認しつつご祝儀を受け取るお仕事をする。もちろん祝いの場だから温かい雰囲気であるものの、式特有の緊張感がある。失敗をするわけにはいかない。

部活の同期と二人並んで控え室の前に立つ。ちょっと軽い雑談をしていると、彼は内ポケットからご祝儀袋を取り出し、「俺らはどのタイミングで出すのだろう」と言う。「まあ今出してもいいんじゃない」と答えつつ、寒気が走る。というのも、彼が取り出したご祝儀袋の「寿」の文字の下に、新郎の名前が書いているのだ。

僕の内ポケットには、「寿」の下に僕の名前を書いたご祝儀袋が入っている。その日の朝に書いたものだ。漢字を間違えないようにびくびくしながら書かれたその文字はみみずみたいに震えているが、そこに書くべき名前が自分のものであるかは確信が持てない。

「寿」の文字は、もしかするとその下に書かれた名前を祝うためのものであるかもしれない。祝いたいという気持ちに嘘はないが、しかし表面的には勝手に結婚式にやってきてセルフで自分自身を祝っているのではないか。

余裕を隠して笑ってみるが、どこかぎこちない。これはもしかすると一生の不覚かもしれない。震えを抑えつつ、間違えていた場合どうやって笑い話に昇華するかいくつかパターンを練っていると、僕たちのもとに新郎の友人が近づいてくる。

運命はここで決する。「おめでとうございます」の言葉は宙に浮き、僕の視線は彼が取り出したふくさにのみ注がれている。

サッと取り出したそのご祝儀袋には、僕の知らない名前が書かれていた。よかったあ、と安堵するが、それはつまり僕の隣に立つ部活の同期が大汗をかくということだ。


結婚式・披露宴ともに本当に素晴らしかった。確かな幸せがそこにはあって、その瞬間をわずかでも共有できたことを嬉しく思う。おめでとうございます。

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