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2024年5月15日

原良輔さんの日記

今日、始発の新幹線に乗って実家に帰ってきた。 久しぶりの実家だ、地元兵庫県の姫路駅に到着した。

実は寝過ごして岡山駅まで行ってしまったのだが、反対方向に乗り換えて姫路に戻ってきた。

姫路駅の改札を出ると、ストリートピアノが目に入った。朝の人通りの少ない通路に1台置かれたグランドピアノがひっそりとそこに存在していた。

ピアノなんて今まで生きてきてほとんど弾いたことがない。強いて言うならピアニカぐらいだろうか。 東京だとそこら中にストリートピアノが置いているが、姫路にも置いてあることに少し驚いた。

普段なら見向きもせず通り過ぎるのだが、何故か今日は少し近づいてみた。 ここにピアノがあることが意外だったからだろうか、もしくは人通りが少なかったからなのだろうか。 気づくと僕はミの#の鍵盤を叩いていた。

静かな改札前の通路にミの#の音が響いた。 人通りが少ないとはいえ無人ではなかったので何人かは驚いた顔でこっちを見ていた。 そんなのは気にせず、椅子に座ってみた。 両手で鍵盤を叩いてみる。 グランドピアノに向き合って座るなんて、本当に久しぶりだった。最後にそれをしたのは中学時代に音楽室の掃除担当の日にふざけてピアノを弾いた時かもしれない。 弾いてみると案外楽しくなってくる。音楽になんてなってやしないが、今この瞬間ピアノで音を出している僕一人だけは確実に音を楽しんでいる。これはもう音楽なのだ。 しばらく音楽を楽しんだ後、手を止めるとこの空間から音楽が消えた。 拍手喝采!なんてことが起こるわけなんてないのだが、自分に向けて心の中で大拍手。 そうして、僕はピアノを離れて駅を後にした。

… なーんて妄想を膨らませながら、実際にはただ改札前にピアノがあることに珍しがりながら、2、3歩歩み寄りつつ立ち止まることもなく駅を出ていったんだった。

ほんの数秒間でシミュレーションした妄想の世界は現実で試す必要なんてないぐらい素晴らしいものだったから、妄想のまま心にしまっておこう。

あ…ミの#の鍵盤なんてないや。

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