昼過ぎ、気まぐれに散歩をしてみるとちょっと興に乗ってきて、二つ隣の駅までやってくる。
知らない駅前は楽しい。寂れた商店街の中に古い雀荘やらパチンコ屋やら焼き鳥屋がたくさんあって、それらを素通りする家族連れの姿がなんとも言えず良い。
古い喫茶店に入り、アイスコーヒーとプリンを頼む。店内では古いアメリカのロックがかかっている。長く伸ばした白髪の美しい初老の店主が、カウンター奥で流れる音楽に合わせて小さな声で歌っている。
たっぷり入ったアイスコーヒーと、まさしく喫茶店的な硬いプリンが運ばれてくる。店主はまずコースターを置こうとするが、手が濡れていたのか、スッと着地させることができない。カラカラと高い音を立てながら、木製のコースターがテーブルの上を滑っていく。店主は地面に落ちるギリギリで停止したコースターを見て、ほっと安心したように「すみませんね」と笑う。
良いお店だった。
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