豚汁をおかずに夕ご飯を食べ終えると、ちょっと休憩して皿洗いに移る。
ここでシンクを空っぽにできるかどうかが、部屋に最低限の清潔さを保つ最良の一手だと思っている。一度寝転がってしまった身体を起こすのは確かに面倒だが、散らかった不潔な部屋では精神も平穏ではいられない。
「ちゃんと皿洗いできる俺えらすぎ」と言い聞かせながら汚れた食器を磨く。排水口に溜まった生ごみを素手で掴み、ゴミ箱に捨てる。先日捨て損なったゴミ箱はパンパンに詰まっているから、ゴミを握りしめたままぎゅっと押し込む必要がある。
生臭いゴミ袋の中から、黒い小さな破片のようなものが飛び出してきた気がした。嫌な予感がして目を細めて確認してみると、プラスチックトレイに張り付いて蠢く黒い影。
コバエだ。
ちょっと鳥肌が立ってしまう。まあコバエ程度なら、ちゃんとゴミ箱の蓋を密閉して外界と遮断し、来るべきゴミ捨ての日に丸ごと袋で包んで捨ててしまえば大層な被害はもたらすまい。こんなことは何度かあったし、コバエが致命的な何かをもたらしたなんて話は聞いたことがない。
しかし明日は飲み会である。おそらく帰りは遅いし、その翌朝は休日である。早く起きる外的な理由が何もない。ダラダラと朝の時間を貪りたい。
それでもやる時はやらねばいけないのだ。これはコバエとの戦いでもあり、僕自身との戦いでもある。
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