うっかり炊きすぎて余ったご飯を冷凍しようと、箱に入ったサランラップの先っぽを引っ張ると、するすると糸がほつれるように途切れてしまう。
これはいかんぞ、と箱から筒を取り出して、見えない境界を探して爪を立てる。小さな段差でグッと力を込めると、細かいラップの断片だけがヒラリと床に落ちていく。
ボロボロになったサランラップ。一枚のシートを取り出すことは難しいかもしれない。しかし新しいサランラップを買いに行くのは面倒だから、とにかくこいつと格闘をしよう。とはいえなかなかの強敵だ。
ただ巻かれた先っぽが見つからないだけならいい。ややこしいのは、すでに何周も引っ張り出されて薄くなった部分と分厚い部分が混じり合い、ちょっとした断層の様相を呈していることだ。そのせいで、苦労の果てに筒の半分くらいの長さのラップを引っ張り出せても、その場所よりも何重か分厚い硬い地層によって一枚のシートになることを拒まれてしまう。
気がつけば十分以上が経過している。当初は琥珀色だった筒の表面も、今では頼り甲斐のない白っぽい透明色になっている。もうこのラップはあと数周の命かもしれない。床には大小さまざまのラップの切れ端が散らばっている。
結局、何の奇跡か、サランラップは再び完全な姿に戻った。ご飯を包むくらいの分量はかろうじて残っていた。
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