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2024年12月26日

【運営の日記】夜の寒さに惹かれて

U-NEXTで『陪審員2番』を見る。今年で94歳になるクリント・イーストウッドの最新作だ。

ちょっと思ったことをつらつらと。


「重い」物語というジャンル(?)がある。「考えさせられる」物語と言ってもいい。鑑賞後に胸がスッと爽快な気持ちになるような物語ではなく、どんよりと考え込んでしまうような物語だ。

僕はたまに「重い」映画が見たくなる。本当の悪は全然滅んでいないし、むしろ「善が悪として裁かれる」という胸糞な展開があったりして気が滅入るのだが、どこか癖になってしまうところがある。僕は映画を見てその内容に共感したり憤ったりすることはほとんどないから、多分僕は内容の「重さ」を求めているのではなく、「重い」映画が必然的に要請する何らかの要素に心を惹かれている。

思うのだが、それはひとえに「夜の寒さ」だ。「重い」映画では、概して主人公や主人公を取り巻く人が悩む。ひとり孤独な部屋で天井を仰ぎ、運転席でハンドルに顔を埋めたりする。

その葛藤は、多くの場合、夜の景色を背景に展開される。ダウンジャケットを羽織り(間違ってもコートではいけない)、寒さでざらついた肌もそのままに悩む人。吐息が白い煙となって立ち上り、窓を結露で濁らせる。

この「夜の寒さ」が、どうにも僕の大好物らしい。うまく説明できないのだけれど、「寒いなあ」と思うときの寂しさがグッとくるというか、僕の心を安心させるのだ。

「重い」映画は、こういう寂しさに満ち満ちている。だからいくら胸糞な展開に心をかき乱されようと、むしろ寒さに震える登場人物の姿を見て、むしろホッと落ち着いた気持ちになる。逆説的な言い方になるかもしれないけれど、僕は「重い」映画を見て、安心を得ようとしている。

もしかするとこれは奇矯な鑑賞の仕方かもしれない。でも映画を見る理由なんて、画面が投げかけてくる寂しさを身体で浴びることでしかないでしょう?

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