高校の同期と池袋でビアガーデンに行く。同じ野球部で辛酸を舐め合った三人で、最近ちらほらと会うようになっている。
ビールを飲みながら過去の思い出話(大体が自分の失敗を笑い飛ばすような話だ)をしたり、仕事であったり家庭の話をしたりする。人の入りは80%くらい。ガヤガヤとした屋外はわりに涼しく気持ちがよい。
ポツリと雨が降ってくる。ちょっと嫌な感じだな、でももう少しくらいは耐えてほしいな、と思ったその刹那、雨量は勢いを増し、残酷にもちょうど焼き上がったばかりの肉に降り注ぐ。
悲鳴が聞こえた。ような気がする。少なくとも周りの客たちは一斉に屋内に避難し、残っているのは傘をさし優雅に雨をかわす女性四人組と、濡れることに若干の誇りを覚える阿呆な野球部たる我々のみ。
ありえないくらい水を含んだポテトと、雨に洗い流され真っ白になったキムチ。焼きおにぎりはおじやのようにほどけ、味付けの豆板醤はポン酢くらいシャバシャバの液体となっている。蒸気機関車よろしく水蒸気を上げ続ける鉄板の上で、焼けるか煮えるかの瀬戸際で火の入る豚肉だけが食物としての矜持を辛うじて保っている。
「この雨だったら練習はなしかな」と高校球児に戻った我々は言う。「ここで堂々と雨に濡れるのが格好いい」などとほざいたりもする。しかし雨は冷気をも運んでくるのであって、冷え切った身体は雨に拒否反応を示す。配られる雨合羽を被り、残りの肉を喰らう。
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