ふと、この日曜日を予想外の方向へ開いていきたいと思った。
午前中は家でちょっと作業をして、午後は喫茶店で本を読んだ。数年ぶりに読み返す『罪と罰』が記憶していた以上に面白く、かつほとんど内容を覚えていないことにしょげた。駅ビルを冷やかし、何も買わずに帰路につこうと思ったとき、ふと思った。一日中誰とも喋っていない。
別にこんなことはしばしばある。というより、一週間のうちに一日くらいは一人で気兼ねなくだらだらとするのが好きなのだが、なぜだかこのときは、このままいつも通りの退屈な日常を送り、(おそらくは)それをすぐに忘却してしまうことに強い焦りを覚えたのだ。
というわけで、駅の近くにある小さなビアバーに入ってみる。小洒落たスタンディングのお店で、ひとりでお酒を飲むにはちょっとお金も張るが、まあいいだろう。
日曜日の夕方だからか、店内では常連がわちゃわちゃとしていた。60手前くらいの男性が、かつてタイに単身赴任をした際に、現地でたくさん遊んだ話を大きな声で話している。飲み屋の光景はどこもあまり変わらないものだなと思う。
部外者感を多少なりとも覚えつつ、よく冷えたIPAとベリー風味のビールを二杯ほど飲む。最初は本を読みながら飲んでいたが、酔いがゆっくりと回るにつれて、だんだんと脳みそが活字を不必要にしていく感覚が芽生えてくる。読書に疲れたからといって、別にスマホをいじりたいわけでもない。たまにはこうやって、とにかく視覚にもたらされる刺激を減らす必要があるのだろうと思う。別に銭湯でも行けば済む話だとも思うが。
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