寝床から起き上がるとすぐにベッドのシーツと枕カバーを外し、ぎっしりと詰まった洗濯機の中に放り込む。残り少ない洗剤を入れ柔軟剤を回しかけた瞬間、薄いシーツの裏側にぼんやりと灯る光の影に気がついた。
スマホだ。
寝ぼけた脳が一瞬で覚醒した。僕はスマホを洗濯するところだった。
たしかに布にしては若干重いような気がしていた。しかし絶妙な具合で包み込まれたスマホは、それに気がついたのがほとんど奇跡と思えるくらいにひっそりとその存在を隠している。あと一歩で洗濯機の蓋を閉じ、何の疑念も抱かぬまま運転を開始していたのだと思うと、冬の冷気を押し除けるように嫌な汗がじんわりと染み出してくる。
コメント