下高井戸駅を降りて叔母の家へ向かう。世田谷線に乗り換えて一駅のところに叔母の家はあるのだが、今日は乗らずに歩いて行くことにした。
今年の5月に開催したフォトイベントで出会ったNさん。 末期の乳がんで、みんなにお別れを言うために宮崎へ帰ってきたの!と言っていた。 とても明るくて温かい、優しい光を放つ方。私は一瞬で心惹かれた。 「私も東京に親戚がいて仕事でもプライベートでもよく行くんですよ」と言うと、東京のどこ?という話になりなんとNさんは叔母の家から徒歩3分くらいの場所に住んでいたのだった。 「お野菜作りすぎて余っちゃうからおばさんもらってくれないかなぁ?」ととっても可愛らしい笑顔で話してくれるNさん。あぁ、もっと仲良くなりたいなと思った。 なんだかとても深いご縁を感じて、今度叔母の家に行くときに是非また会いましょう!と言い合ったところでその日のイベントは終わった。
Nさんの訃報が届いたのは8月21日。 4年前の祖母の死もショックだったけれど92歳で老衰だったから、ありがとう、お疲れ様という気持ちだった。 今回は違う。Nさんはまだ50歳で、あるはずだった未来、仲良くなるはずだった可能性が突然ブツっと消されてしまった気がして打ちひしがれた。 Nさんにとっての1日。痛みも感じず心地よく過ごせた日が何日あったのかな? そのとてつもなく貴重で大切な1日を、私は無駄に過ごしていなかったか?
「明日死んじゃうとしたら何をする?」 たまに夫と話すのだけれど、きっと特別なことはしないよね、と、二人ともいつもそこに落ち着く。 明日死ぬとしたら? 線路沿いを歩きながら、頬に当たる風が心地よい。 陽が陰る寸前の空の色が美しい。 もう秋の空だけど雲はまだ夏の入道雲だな。
また会いましょうね!と言った。 会えなかった。 Nさんのお家はどこだったのかな。
そんなことをつらつらと考えていたら叔母の家に着いた。 今日は夜ご飯を食べながら叔母とたくさん話をしよう。
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