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2024年9月29日

【マサイさんの日記】越境一泊二日

昨日から家族と車で一泊二日の旅。 ひたすら境を行き来している。

まず、福岡と大分の県境をいつの間にか越えていた。福岡の人に「豊前(ぶぜん)って大分っぽい」と言うと、どこが?と大体笑われる。昔の呼び名では、「豊(ぶ)前」は主に福岡、「豊(ぶん)後」は大分。ぶのぶぶんが、と言ってもいまいち伝わらない。

県境ギリギリの福岡側、道の駅「豊前おこしかけ」に立ち寄った。中途半端な天狗が立っている。英彦山の道の駅にいるガチ修験な天狗と比べると、ひ弱そうで憎めない。天狗からすれば、豊前と豊後くらい、ひとまたぎだろう。県境など人間が決めた、ただの線。腰かけたのは天狗だとずっと思っていたのに、神功皇后だと知る。ややこしや。いつも買うたまごサンドがなかった。

からあげの聖地・中津とUSA(宇佐)を横目に、国東半島へ。半島のはじまりってどこ、と思うけど、国東には「いま入った」と感じる瞬間がある。独特の未開っぽい陰影。コロナ禍前に「鬼会」を見たとき、人が鬼を背負って山からおりてきて、山と里の境界が何ともあいまいな土地だと思った。

熊野磨崖仏は顔が夫に似ているので、つい立ち寄ってしまう。2年前に夫(蟹座)の誕生日にきたら、川にサワガニが90匹以上いた。今回は水が少なく、10匹にも満たない。仏さまの顔に前髪のような草が繁って、チャームポイントの目が隠れていた。受付のおばさんが「鬱陶しいでしょうねえ、手があったら払いたいでしょうに。国の文化財だから雑草ひとつ勝手に払えないんですよ」と気の毒そうに言った。

海側の伊美という地区に初めて行った。神社の看板に山口県祝島の神舞を行うとある。国東は周防灘に面しているから、四国や瀬戸内と体感的に近いのかも。

豊前(福岡)で夜神楽があると聞きつけて、また県境を越える。囃子の音を辿って、小学校に到着。よそ者の私たちも混ぜてもらう。激しく舞う鬼が結界から飛び出してきて、娘は暗闇に逃げ込んだ。中津駅前(大分)の宿まで10分、県境をまたぐ。晩ごはんは2000円のお食事券で鱧の官兵衛定食。ラストオーダー寸前だった。

深夜、進行中の校正原稿を2つ戻す。

遮光カーテンが優秀すぎて、起きたら7時半。夫は2時間ほどかけて、佐伯の藤河内渓谷に行きたいという。桑原川沿いにずんずん山奥に入っていく。曲がり道は、転落しかねない剥き出しの崩落ポイント多数。くわばらくわばら。

渓谷は水が翠色で、岩が不思議な造形に削られていた。絶妙な湿度と光の加減のせいか、斜面の腐葉土はキノコ天国。18種類ほど見つけた。おそらくウスキキヌガサタケに3つも遭遇!黄色のワンピースみたいなレースは3時間ほどで消えてしまうらしい。僥倖。ひい、虫が無数にたかってる。

早めに帰路に着く。トンネルを抜けると、中央分離帯をかすめるたびに「ゴッドファーザー」のテーマが響く気がして、耳を疑う。居眠りや速度超過の防止策として、「音響道路」なるものがあるそうだ。車線を越えたらdeath、マフィアの凄み。

豊後大野は見渡すかぎり黄金の稲穂。竹田を通るころには寝落ちし、気づいたら熊本の小国町に入っていた。阿蘇の眺めは大分とはちがうと一目でわかる。

娘が言葉遊びをしようと言う。「1文字目が“た”で、4文字目が“じ”の言葉なんだ?」とお題を出す。「たぬきじる」はわかるまい、さすがに意地が悪いか。しばし沈黙の後に「たからじま!」、想像の線を超えてきた。

プロフィール

マサイ

マサイ

摩耶山(神戸市)のふもと育ち。福岡市在住。聞き書きライターとコピーライターの二足わらじ「マサイ文作室」やってます。好きなことは、神社や仏像、まつり、手仕事、本、きのこなどを追いかける旅。日記歴35年。 書いたもの例→https://qualities.jp/author/ayaka_masai

日記
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