エスカレーターで前に立っている男性が、黒い布地に橙色の縫い目のリュックサックを背負っている。よく知っているこの色味は、もちろん読売ジャイアンツのものだ。リュックの背面には「Yomiuri Giants」との文字が目立たずに書いてある。
ジャイアンツがクライマックスシリーズに敗れて数日。もちろん朝の港区に巨人の試合を応援する人などいるわけもないのだから、応援をするからと理由をつけずとも巨人軍の看板を背負うことに抵抗のない、筋金入りのファンなのだろう。
しかしリュックサックに付けられたバッジをよくみると、見覚えのある「F」の文字が見える。日本ハムファイターズ。これまたクライマックスシリーズで敗れ今シーズンを終えたチームである。
たしかにリーグごとに巨人と日ハムを応援している、というのはわからないでもない。しかし僕の知る限り、NPBの2チームのファンには出会ったことがない。
NPBとMLBならわかる。結局のところ、それら2つのチーム同士で戦うことはないのだから。
しかし巨人と日ハムは、日本一をかけて争いあうライバルなのである。ましてや今年など、巨人対日ハムの頂上決戦が行われる可能性だってあったのだ。その両チームを一つのリュックサックに集約させるなど言語道断ではないか。
などと思ったりもしたが、よく考えると、巨人も日ハムも日本シリーズであい見えることなどなかったのである。この男性は、銀メダルの悲哀を一手に背負ってくれたのかもしれない。
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