夕方、仕事にラストスパートをかけるべく、階下の自動販売機で甘いコーヒーを買う。温かい缶を両手で持って、ぬくぬくとした気分で資料作成の取り掛かろうと意気込む。
が、取り出し口に手を入れた瞬間、空間に漂うただならぬ冷気にゾッとする。ここは穏やかな空間ではない。春とは思えぬ寒さに震える身体がビクッと痙攣し、その気候に対応できない自動販売機の融通の効かなさに気がつく。そうだった。数週間前に、自動販売機は「あったか〜い」から「つめた〜い」に衣替えしたのだった。
その変更を、確かに僕は知っていたはずだった。「気づきました? あったか〜いがつめた〜いに変わったんですよ」と世界の真理を発見した少年のごとく同僚に報告したのはつい数週間前の僕だし、生暖かい午後に希望通りこの自動販売機でアイスコーヒーを購入したのも僕だ。
かつて、コーヒーのボタンを押したらevianが出てきて憤慨したことがある。しかし今回は誰が見ても正しく「つめた〜い」と表示してくれている。悪いのは僕であり、どうしても他者のせいにするならば、もう4月にもなるのに「あったか〜い」が欲しくなる冷気を運んできた世界を恨むほかない。
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