シャワーを浴びていると、石鹸が残りわずかしか残されていないことに気が付く。ほとんど紙くらいに薄っぺらで、鏡に映る僕の身体と同じくらい貧相ななり。
そういえばそうだった。新しい石鹸に入れ替えようともう何日も決意しながら、翌日シャワーで髪を濡らした瞬間にそのことを思い出しているのだ。薄っぺらな石鹸をなんとか泡立たせて身体を洗い、風呂上がりに補充すればいいじゃないかと思い至るも、身体が綺麗になったついでにその思いつきも忘却の淵に沈んでしまう。それでもなんとかなってしまうのは、牛乳石鹸の底力というべきだろうか。
しかし今日のこいつはどうだろう。擦り減った身体は自重すらも支えきれないほどに弱々しい。もうお前は十分頑張ってきたよ、と声をかけたくなる。
石鹸が愛おしい。長い間、こいつは文句の一つも言わずに僕の身体を洗ってきてくれたのだ。ボディソープに浮気したこともあったが、やっぱりこの爽やかな洗い心地は格別だ。
トーストにバターを塗り込むようにして、タオルに石鹸を擦り付けていく。なんの痕跡も残さず、最期まで使ってやろう。ちょっと残った固形部分をタオルで包み、すりつぶすように泡に変えていく。
バイバイ。
石鹸はまだ補充していない。
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